およそ10年前のmixiの日記は誰にとっても黒歴史なのかもしれないと思った話。

f:id:tonymctony:20180822102357p:plain

 

育児とはまったく関係ない話なのですが、こんな記事を見て、「そういえば私もmixiに日記を書いていたなぁ。」なんて思い出し、10年ぐらい前に自分で書いたものを読み漁ってみたのです。

 

www.saichanblog.com

 

「ブラック発言でフォロワーを減らす会」やら「妻の後ろ姿頂上決戦」やら「10年前のmixiを晒す会」やら、魅惑的な企画を立ち上げるので有名な「さい彦」氏。いつもは誘惑に打ち勝てるものの、今回は誘惑に負けてしまい、私も晒してみんとてするなり。

 

先哲↑のように面白い文章はほとんどなく、何を買ったとか、ライブに言っただとか、身内ネタのオンパレードでした。そして文体が痒く感じてしまい、どうにも読み切れないものが多かったです。およそ10年前の私、恐ろしや。。

 

 

 

mixi

mixiはクローズドSNSの走りだったと記憶しています。招待状が無いと登録できない怪しいサイトだと聞いていて、自分に招待状が来たときは登録しようかどうしようか迷ったものでした。

 

Facebookの登場により廃れていき、後にゲームで復活。今ではSNSよりもモンストの会社と言った方が分かりやすいのでしょうか?

 

日記

登録した当初、私はあまり日記を書いていなかったようなのですが、集計してみると175もの駄文を積み重ねておりました。どれも読み始めると蕁麻疹が止まらず、冷や汗が止まらないものばかりでしたが、ある「コンセプト」に則って書かれた、まだ「読める」日記が3編があったので、今回恥を忍んでご紹介しようと思います。

 

1.こころないひと

本日はY宅を訪問した。

彼は昼間から酒を飲んでいて、

顔面は真っ赤であった。

 

連絡を取らずに向かったので、

彼は驚いたような怒った表情をし、

僕にどうしたのかと問うた。

 

僕は仕事を辞めたと嘘をつき、

彼に好奇心を抱かせ、家に上がり込んだ。

 

席を勧められ、

酒と肴を用意され

好奇心の塊となった彼は

僕に話を促した。

 

同僚が阿呆だとか

上司に態度を注意され、

上司を殴りつけただの

適当に理由をでっち上げ、

彼を欺いた。

 

彼は神妙な顔つきで

僕を慰めるような言葉を投げかけ、

酒を一気に飲み干した。

 

すると彼は

心の内に溜まっていた鬱憤を晴らしだした。

元来彼は不平や悩みを打ち明けるのが下手な性質であり、

かくように相手が相応の打ち明けをしたときに、

漸く自分の不満をぶちまけることのできるようになるのである。

 

彼の話を要約すると

所属する心理研究会の新入生に心をときめかせ、

就職活動はおろか、

学業までもが疎かになってしまっているという。

 

彼は僕にどうすればいいかと窮鼠の目で教えを請うた。

僕は得意満面になり、面白い玩具を手に入れた子供のように

心が躍った。

 

僕は彼を煽ることにした。

 

まず、第一撃に、

「精神的に向上心のない者は馬鹿だ。」

と、かの大作家の作品から引用し、

彼に僕は馬鹿だと言わせることで、

先ず自分の利己心を満たした。

 

次いで第二撃に

「学業を取るか、恋愛を取るか、この場ではっきりし給へ」

と、得意の相手を思いやらない発言で彼を沈黙させた。

 

すると彼は

「もうこの話は止めよう」

と言い出すので、

 

またかの大作家の作品から引用し、

「止めてくれって、僕が云いだした事じゃない、

もともと君の方から持ち出した話じゃないか。

然し君が止めたければ、止めても可いが、

ただ口の先で止めたって仕方があるまい。

君の心でそれを止めるだけの覚悟がなければ。」

 

と唆す。

 

すると彼は

「覚悟-覚悟ならないこともない。」

 

と主張したのでこれはしめたと思い、

彼を根拠のない理由を持って煽てた。

 

宴は盛り上がり、

僕らは日が暮れるまで盃を交わした。

 

おそらく、彼は明日、告白するだろう。

そして、また憂鬱になるのであろう。

 

間違っても彼が、

覚悟の意味を誤らならなければいいのだが。

なったとしても

僕の知ったことではない。

 

「お前に関わって、いいことがあった試しがない。」

彼は私にそう言い放った。

無論、褒め言葉であろう。

 

2.或る男

或る男と出会ったのは教育棟の一階、

トイレの前の通路であった。

 

私は社会的協調性に欠けた臆病な人間であったため、

入学オリエンテーション後の昼休み、

誰とも会話を交わせず、ただ途方にくれて歩いていた。

 

外を歩いていると、サークルの勧誘に遭遇するので、

それが煩わしく感じた私は、

建物の中を探検している新入生を演じることに決めた矢先、

私の進行方向に、新入生が歩いてくるのが見えた。

 

新入生はオリエンテーション時に渡された紙袋を持っているため、

私の進行方向から来る彼が新入生であることはすぐに分かった。

 

しかして、新入生であるからといって、

積極的に声をかけようとはしていなかった私が、

彼とそこで言葉を交わした理由は、今でさえ定かではない。

 

おそらく、彼のほうから声をかけてきたのであろうが、

邂逅の場面を思い出すことができないでいる。

 

彼の姿を一目見るなり、

とても几帳面な人間だと思ったことを覚えている。

軽い自己紹介の後、

彼と同じ学科であること、

彼と同じ志を持っていることが判明したが、

彼とはそこまで長い付き合いになることはないだろうと感じた。

 

私の直感は一つは当たり、一つは外れた。

 

----

 

あの時19だった彼も今日で26になった。

彼との付き合いももう7年目に突入したのである。

 

その間、様々なことがあった。

 

今でも強烈に頭に残っているのは、

教育実習の打ち上げであるが、

これは長くなるのでまた別の機会に話すことにしたい。

 

彼は青森に帰り、

家業の手伝いをしている。

その決断までに起こった苦難を私は良く知らない。

おそらく、彼にしか分からないことなのだろう。

 

普通のことを苦難に変える男、

それが彼なのだから。

 

誕生日、おめでとう。

 

3.グッドバイ

岡山の、或る天才が大学時代を過ごした街を去ると決め、

そのお別れ会の終わり頃から、

彼が振りはじめた。

早熟のネタである。

 

その帰り、二人の男が相合傘で歩いている。

 

いずれも、その去る天才には、お義理一片、

話題は女についての極めて不謹慎な事。

柄服の小太りの男はT。

それより少し痩せた四角眼鏡、

柄ダウンジャケットの好男子はW。

 

「あいつも、」

とTは言う。

 

「女が好きだったらしいな。お前も、そろそろ年貢の納め時じゃねえのか。やつれたぜ。」

 

「全部、やめるつもりでいるんです。」

Wは顔を赤くして答える。

 

このT、ひどく露骨で、下品な口をきくので、

Wはかねがね敬遠していたのだが、

今日は自身にかさの用意が無かったので、

仕方なく、Tのハートの大傘にいれてもらい、

かくは油をしぼられる結果になった。

 

全部、やめるつもりでいるんです。

しかし、それはまんざらでもなかった。

 

なにかしら、変わって来ていたのである。

大学卒業以来、1年経って、どうやら、変った。

 

Wが青森へ帰る心積もりを口にしたのは、

その半年後のことである。

 

大学を卒業するとき、

Wの顔を毎日見れなくなれることに、

悲しみや、執着心は湧かなかったが、

流石に今回は寂しくある。

 

昨年Yを送ったジンギスカン屋で

今年はWを送った。

来年は誰が送られるのであろうか?

 

この度の送別会にて、

私はエンターティナーとしてのWの

ファンであったことに気づいてしまった。

 

場に人が集まれば集まるほどに、

彼の芸には切れ味が増し、

私はその動きに魅了される。

 

その完成形が、

謝恩会での落涙であったことは記憶に新しい。

 

彼とはまた、会えると信じているのだが、

それは10年程後になるのであろう。

 

グッド・バイ

(彼の出身地に因み、太宰のパロディにいたしました。)

 

コンセプト

クローズドSNSであることをいいことに、私は友人と会ったり、お祝い事があったりする度に、その時の記録を文学的な日記にして書いて遊んでいたようでした。さらには175記事のうちの殆どがYとWについてのもので、「どんだけ私は彼らが好きなんだ!」と、およそ10年前の己の内に隠された恋心に気づき、慄いてしまった次第です。

 

書くたびに「俺はあんなのじゃない」とお褒めの言葉を頂いたり、「もう書かないでくれ!」と嬉しい胸の内を明かしてくれたり、相思相愛だったことを思い出しました。

 

まとめ

10年前は、まさか10年後の自分に読まれるとは思いもしなかったでしょう。これを書いている今、10年前の私と今の私が恥ずかしさで悶えております。

 

子どもが大きくなった時に、何かの拍子で読まれないように消し去っておくべきなのか、それとも見つけられた時に感じるであろう歪んだ悦びを体験するために、恥を忍んで残しておくべきなのか。

 

皆様も10年前の日記、読んでみてはいかがでしょう?きっと十人十色の戦慄が待ち受けているはずです。

 

追記

この記事にインスパイアされて、黒歴史の扉を開けた方がいらっしゃいました。

www.asa-mushi.net

 

これはなかなか強烈な…。そしてこれをオープンにした勇気には脱帽です!失恋って、相当「クリエイティブ」なエネルギーを生みますよね。ベクトルはとんでもない方向向いてしまいますけど。