映画『来る』の原作『ぼぎわんが、来る』を読む。

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電子版を購入しました。

 

ホラー映画にもホラー小説にも全く興味が無かったのですが(怖いから)、「ぼぎわんが、来る(澤村伊智 著)」を、人に薦められたので読んでみることにしました。

 

読書中は妻に異様に優しく接するようになりました。それを不審がった妻にその理由を問われた際、「今、呼んでる小説が怖くてさ…」と真顔で答えた私はいかにも滑稽だったらしく、妻は噴出して笑っておりました。

 

妻が解釈した「怖さ」と、私が言った「怖さ」が異なっていることも知らず…。

 

※以下、ネタバレを含みます。大変面白い小説でしたので、読んでみたいという方は是非本作を読んでからお読みください。

 

 

 

ぼぎわんが、来る

 

第22回ホラー小説大賞の大賞受賞作。なかなか大賞受賞作がでない同賞の中で、選考員全員に絶賛された異例の小説なのだとか。

 

著者の澤村伊智が初めて書いた長編らしいです。初めて書いた小説が映画になるなんて凄いなとか、将来が楽しみだみたいな感想は他に任せるとして、私がこの本を読むことになった経緯を話していきたいと思います。

 

※以下、ネタバレを含みます。

 

読んだきっかけ

 モラハラ夫と離婚したブログを読んで、ブックマークコメント経由でTwitterに呟いたところ

ワンオペ育児のほうが楽だった - モラ夫と離婚しました。

私はよく妻からモラハラだと言われるのですが、ここまで酷くはないと思っています。。そんな状況でイクメンアピールできるのが凄い…。

2019/01/14 15:25

 

 以下のような返信を頂きました。

 

 

半ばネタバレされたようなものですが、「ぜひ読んでみて」と人に薦められるほどの作品いうことは「つまらなかったら、お代を返せと言えるだろう」という悪知恵も働き、損はしないだろうと思い、読んでみることにしました(読書は損得でするものではないですけどね)。

 

「怖さ」に触れる

この人がイクメンアピールを…と思いながら読み進めていくと、案の定私が嫌悪する「イクメン」として描かれており、少々吐き気がする描写が続きました。それとともに、自分が同じことをしていないだろうか…?という恐怖に囚われ、読中は本記事冒頭に書いたように妻に異常に優しくする夫になりました。

 

イクメンってその言葉の響き自体が嫌いで、それについて積極的に話すものでもないと思うんです。もちろん、そう言って広げていかなければなにも変わらないのは分かるんだけど、何かを勘違いした似非イクメンが多すぎるような気がして…。

 

似非イクメンの方々って、妻や子どもの為というよりも、自分の利己心を満たすために行動しているような気がするんですよね。

 

自分を省みる

私はイクメンアピールをするのが嫌いなので、この物語の自惚れ屋のように子育て論を誰かと語らうようなことはしていないつもりですし、それを開けっぴろげにしているつもりもございません(知らぬうちにやっているのかもしれないけれど)。

 

妻を卑下するような発言を他人にする気もないですし(むしろ礼賛はする)、妻を尊敬し尊重している「つもり」ではいます。

 

ですが、よく妻に「あなた、基本モラハラだからね」と半ば冗談(と捉えているが本気かもしれないという恐怖もある)で言われるにつけ、やはり「気づけない部分」「思い違いの部分」に何かがあるのだと思いますし(好き嫌いとか、物の言い方とか分かる部分もあるのだけど)。

 

そして、その気づけなさの積み重ねがすれ違いへと発展していくのだから気を付けなければと、自分への戒めめいた感情で省みることがあります。

 

ある治療に対して

作中では、男性が不妊治療・検査に対して積極的でないという話が出てきます。わが家でも妻が不妊治療で病院に通っていたことがあり、私も不妊検査を受けました。

 

www.tonymctony.com

 

不妊治療が数か月の「序の口」で終了したわが家では、本当の苦しみは分かりません。ですが、「序の口」であってもかなり苦しかったです。自分の検査が問題なかったことも苦しかったし、それで妻がどう感じるかを考えるのも苦しかった。

 

ゆえに、男性が「自分は関係ないもの」として相手の問題として取り扱うことには、嫌悪感や怒りを感じます。

 

病気になったら

作中で、病気になった際に夫に酷い仕打ちを受けた描写がありました。自分を取り繕うわけではないですが、あれは私的には「ありえない」です。

 

まず、会社を休むか午後出金にするか早退するかのいずれかを検討し、妻の食事は必ず用意します。自分が病気になったらを考えれば、どう行動してもらえたら嬉しいかなんて自明なはずです。相手のことを考えているのであれば。

 

小説の読者として、あいつは喰われて良かったなと思いました。せいせいしたわ。

 

怖さのピーク

これまで書いてきたとおり、私の恐怖のピークは自称イクメン夫の振舞いと、それに対する妻の感情が描写される、第二章「所有者」でした。男女のすれ違いを描いたリアルなホラーだなと。ホラー小説ってここまでメンタルを抉ってくるものだったのか…と愕然としましたね。

 

対して、ぼぎわんの言い伝えやホラー描写にはあまり恐怖はありませんでした。嫌な奴を喰ってくれて「せいせい」したからかもしれませんが(笑)

 

昔ほど、非現実的なものに対する畏怖が小さくなっているのもあるのかもしれません。また、映像で見るとまた違った怖さがあるのかもしれませんね。

 

おわりに

私に勧めてくれた方も感想を書いています。この方は私と立場が違うのでまた違う視点を提供してくれてとても興味深かったです。

 

www.gk-gk21.com

 

なお、この作品はシリーズもので、同じ登場人物が登場する物語が刊行されているんですね。今作の「ぼぎわん」から始まり、「ししりば」「などらぎ」「ずうんめ」とひらがな4文字のタイトルが目を引きますが、また怖い人間関係が描かれているのでしょうか…。

 

少し興味がありますが、今回の「ホラー」によるショックが回復したらにしておきます。この小説の教訓として、自分の生活を省みてから。