行政書士事務所でドローンを飛ばした話。

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離陸を試みた刹那、白色の部品が回転しながら空に舞い上がり、頂点を極めたのち優雅に落ちていく様には、儚いながらも一生懸命に魅せようとする桜の花弁を連想いたしました。

 

操縦桿を握った彼は「ちゃんとメンテしたんですか?」と冷酷に仰り、白色の部品を探そうともしないのでした。私はそれに対して怒りなどは覚えません。いつもの彼がそこにいて、とても嬉しく思ったのです。

 

 

行政書士事務所

私は先日、都内の行政書士事務所に赴きました。1年前の約束を果たすために。

 

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凄く雑に飾られたポスター。イメージキャラクターは真野恵里菜さんなんですね。 

 

元々は同じ会社で働いていた後輩「ロイホ男」は数度の転職を経た後、昨年の行政書士試験に合格し、事務所を構えたのです。

 

この男、一緒に行った京都旅行でロイヤルホストで夕食を食べたため、便宜上「ロイホ男」と呼んでおります。「観光地の当たりはずれのあるご飯より安定感があると思って」とは本人の弁。

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「仕事が軌道に乗ったら」という、社交辞令だったのかもしれない言い回しを敢えて真に受け、我々は1年ぶりの再会を果たしました。

 

ドローン

昨年開催した私の誕生日パーティーにて、ロイホ男はドローンをプレゼントしてくれたのです。

 

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その際に、「いつか飛ばしに行く!」とメールを送り、「仕事が軌道に乗ったらどうぞ」と返ってきたのでした。

 

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送信したメール。この時点では開業前でした。

 

アポイント

以降、ドローンのお返しにお中元やお歳暮を贈ったり、子どもが生まれた件についてメールを送ったりと、頻繁ではないですが何度か連絡をとっておりました。

 

そして今年の8月、残暑見舞いを送った際のメールが以下のものになります。

 

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(左)私の社交辞令メール。(右)ロイホ男の社交辞令メール

 

こうして「秋口になったら」を今月頭に詳細化しアポイントを取り付けました。最終確認のメールが以下のものになります。

 

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(左)ロイホ男のメール。(右)私のメール 

 

事務所訪問

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応接間の天井。部屋の中央に明かりを遮断する梁が存在し、なんとも言えない薄暗さ。なるほど、実に君らしいな!ロイホ男よ!

 

伊勢や京都等にも同行した旅仲間、無口な後輩Aも誘って訪れたロイホ男の行政書士事務所は、なんとも簡素なものでございました。話を聞いてみると客先に出向いて仕事をすることの方が多いとのこと。そうであるならば、彼が一人での仕事に集中しやすい環境の方が良いのだろうなと納得。BGMはヴィヴァルディの「四季」。

 

パンを切る

「さあ、パンを食べましょう。お腹すいちゃって。」と言われ持参したパンをテーブルの上に広げると、ロイホ男には珍しく気を利かせて「コーヒー飲みますか?」と問うてきました。飲み物は出ないものと思って持参していたので「彼も客商売で成長したのであるなれ」と感動し、お言葉に甘えることに。

 

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するとロイホ男はナイフを持ってきて、「コーヒーを入れてるんでパンを切っておいてください」と言い残し、キッチンの奥へと消えていきました。このナイフ、パンの切断に適しているのだろうか?

 

他人の家で文句を言っても仕方がないので、トライしてみましたが、やはり切れない。パンくずが飛び散るのを構わず、ねじ切るようにして切り分けたパンがこちら。

 

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結構いいところのパンを買ってきたのですが、もはやその風格はない。

 

う、うん…。自宅でやったら怒られるクオリティかもしれない。サイズがまちまちだし、小さく切れないし。

 

全員分のコーヒーを持って戻ってきたロイホ男は、「これ、ちょっと大きめですね。」と私に向かってダメ出しをし、自分好みの大きさにナイフでカットしておりました。

 

「長年このナイフを使って勘所は掴んでありますからね。フフフ。」と得意げでいらっしゃる。

 

ドローンを飛ばす

パンを食べながら(珍しく「美味しいですね」と仰っていました)、近況について話しあったのち、いよいよドローンを飛ばすことになりました。

 

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ドローンの電源を入れて…怪しく光りだします!

ドローンを箱から取り出し、電池をセットして準備完了。離陸ポイントは「遺言書作成ガイド」上。コントローラーを握るロイホ男はやや興奮した面持ち。

 

いざ、テイクオフ!!!

 

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(左)赤囲み部分のプロペラが外れました  (右)とんだプロペラをしぶしぶ探し始めたロイホ男

 

ここで冒頭文の展開が待っていたのでした。うん、プロペラ1個だけテイクオフしたね。やめてよ、そんな今まで見せたことのない表情で詰め寄るのやめてよ…。昨日試運転したときは大丈夫だったんだって。

 

気を取り直して

後輩Aが、離陸地点が悪いんじゃないですか?と提言してきたため、床からの離陸に切り替えるも白色プロペラだけ何度もテイクオフするため、プロペラを予備部品に好感することになりました。

 

「あるなら早く変えましょうよ。」なんて怖い声で言わないでくださいませ。

 

予備部品に切り替えたことが功を奏し、白色プロペラだけテイクオフすることなく稼働させることができましたが、

 

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「たいして興味ないんですが。」とのこと 

 

地面を這いつくばって真野さんの元に何度も寄っていったり、

 

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「やろうとしてやっているわけではないんですよ。」とのこと

 

天井にぴったり這いつくばったりを繰り返し、「なんだか、虫(G)みたいですね。食後だからか気持ち悪くなってきた。」なんて後輩Aが言い出す始末。

 

そんな後輩A、気持ち悪さのためかよろけた際に、飾ってあったフェイクの観葉植物にぶつかり、葉がとれてしまったようで、この後ドローンそっちのけで頑張って修復しておりました。

 

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生きてる植物は「面倒だから」と偽物を置いているそうです。(右)落ちた葉パーツ。

 

ロイホ男の凄いところはその後輩Aの行動に気づかず、ひたすらドローン操作に夢中だったことでしょうか。集中力、半端ないですね。

 

着地成功

「コツがつかめてきましたよ!」私が彼らのそれぞれの行動のシュールさに笑いを堪えていると、ロイホ男がそう言い放ちました。今日の集大成としてテーブルの上に着地させるようです。

 

なお、ドローンが起こす風により、先ほど食べたパンの屑が飛び散っていたり、メモ紙がぐしゃぐしゃになっていたりするなど、ドローンが事務所内を暴れ馬のように飛び回った形跡が残っておりましたが、ロイホ男は気にも留めておりませんでした。この人、きれい好きで潔癖気味だったはずなのに、人が変わったのかな…?

 

そうして宣言通り着地させた映像がこちらのものとなります。

 

おわりに

ドローンは子どもが大きくなるまで(自分で)遊ぶのは難しいとロイホ男に告げると、嬉々とした表情で「預かってもいいですか?」と申し出てきたので快諾いたしました。宙返りを練習して、できた暁には再度招集をかけ披露する場を設けることで話がまとまり、私は事務所を辞去しました。

 

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(左)現在の時計。(右)贈ったときの写真。ビール工場見学後の送別会にて。

 

去り際、応接間のテーブルの上にあった時計を指さし「使ってくれているんだね!」と声をかけると「ああ、なかなかいいものですよ。」と返ってきました。この時計、彼が退職した際に私が贈った「労いの品」だったのです。彼にしてみれば、使えるから使ってるだけなんでしょうが、そうだとしても嬉しいものです。

 

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オチは、ドローンの充電器をバッグの中に入れて帰ってしまったことか。送料が勿体なかった!(笑)