「子どもが野菜を食べなくて…好きなものしか食べなくなって…おやつしか食べてくれない…」系の食べ物の好き嫌いに関する話をよく聞くので、私たち夫婦も覚悟をしていた。「決して作ったものを食べなくなっても、作った料理が悪いのではない。『そういうもの』なのだ。だから落ち込まないようにしよう。」と桃園で誓い合った。
しかし、私たちの覚悟に反して、2歳の息子は嫌いと分かっている一部の食べ物以外、なんでもよく食べる。好みにあまり揺らぎがない。そしてきっと美食家だ。
息子のパーソナリティ
冒頭のお話の通り、子どもは嫌いな食べものばかりだと思っていた。それを頑張って無理に食べさせようと努力するよりは、食べるようになってから食べさせればよく、とにかくたんぱく質をしっかり摂れればOK!という気持ちでいたのだ。
私たち夫婦が作る料理が美味しいという理由がちょっとはあると思いたい。だが、ほとんど彼のパーソナリティによるところが大きいのだと思っている。昼寝から目覚めて私を見れば「パパ、ごはん」と言い、私が仕事が帰ってくると出迎えてくれて「おかえり、パパ、ごはん」と言い、私がエプロンをつければにっこりとほほ笑んで興奮する様子を見れば一目瞭然である。彼は食事自体が好きなのだ。
嫌いなものは…
ただ、彼にも嫌いなものがあるのは分かっている。離乳食期に嫌いになったブロッコリーはそれ以来購入していない。ブロッコリーは少々お値段がお高いので、むしろ嫌いでいてくれて家計的に助かっている。
また、肉を固く焼いてしまうと怒ることも分かっている。「いや、私も固い肉を食べたくて作ったわけじゃないんだ、それだけは分かってほしい。」と誠実な声で訴えかけても無駄足である。料理の失敗には手厳しいのだ。
え?私に似ている?いやいや、私は人の失敗にはたいてい寛容ですよ。失敗をあざ笑うぐらいですよ。
寡黙なボーイ
夢の中でハードボイルド映画を見てしまったからなのかは分からないが、息子は寡黙なボーイである。1歳半ばに挨拶や人物名の言葉の発端を発し、「ああ、頑張れば喋れるようになるんだな」と自分で得心してからは、積極的に言葉の数を増やそうとせずにヒアリングに徹しているようだった。本当、今振り返っても当時からヒアリングはパーフェクトだったね、ボーイ。
そのことで、妻は心配していた。いやもちろん私もちょっとは心配していた。でも、彼は私の息子であるから単にシャイなだけだと楽観視してもいた。
好きなものが増えれば自然に増えていくさ、私だってなぜかプログレの歴史とヨーロピアンフットボールの選手名だけは物覚えがいいからさ!と思っていた。ちなみに心配している妻に対してそんな風に励まそうものなら怒られるだけなので言いませんでしたよもちろん。もちろんね!
言葉も食べ物から覚えていった
そして私の予想は当たったのである。いやー本当、当たってよかった。当たろうが当たるまいが私の心の中だけの動きなので正直どうでもいいのだが、それは置いておく。
2歳になり、アレルギーの強さや歯の成長等を鑑みてそれまで与えていなかった食材や調理法がどんどん解放されていったことに伴い、彼の中で食に関するサイダネが発芽したに違いない。なお、私はテンテンくんは当時つまらないと思って全然読んでいなかったため、使い方が間違っていたら謝る。
ある日、私に向かって皿を差し出し「にんじん、おかわり」と笑顔で言い放ったのだ。
それからというもの、あれよあれよと食べたいものに関しては覚えていくようになった。今では「おかわり。にんじん、ごぼー、れんこん、しーたけー♪(息子用筑前煮的煮物を求めている)」と歌うように言うようになったものだ。まるでクリムゾンのグレートディシーヴァーだな。
当然プライオリティはある
基本的に出されたもので、嫌いなもの以外は食べる息子であるが、好きなものから食べていく。これも私に似ている。妻は好きなものは最後に食べる派だ。
とにかくトマトが好きである。これも私に似ている。肉より魚派である。これも私に似ている。お米は最後に食べる。これも私の流儀だ。ボーイ…私の真似してるのかい…。
野菜に関してはトマトが最強で、グレートディシーヴァー四天王、さつまいも、かぼちゃ、ほうれんそうが次点。これらは肉よりもプライオリティが高い。次いで豆腐、それ以外の野菜と続く。
チーズサーヴィス
また、チーズも大好きである。最近、在宅勤務を始めて平日のお昼を家族と共にすることになったのだが、私は自分のために食事を作ってもらうことが申し訳なく、普段通りで構わない(普段職場では自分で作った玄米おにぎりを食している)ので同席だけすると伝えたところ、普段通りの驚くべき光景を目にすることになった。
息子が「チージュおかわり!」と妻に食べかけの料理が乗った皿を差し出すと、妻は欧州産ナチュラルチーズをフライパンで温め始めトロットロにして食べかけの料理にかけて供していたのである。息子は嬉しそうに「あちち、あちち」と言いながらチーズだけを頬張る。
そしてこれを2度ほど繰り返すのである。君はどこかの将軍様か!こんなサーヴィス多分やってもらってるの君ぐらいだぞ!妻…いつも本当にありがとう。
最強は麺類
そんな野菜ラヴァーな息子だが、子どもらしいところもある。無類の麺類好きなのだ。その破壊力のあまり(それしか食べず、永遠におかわりを要求しようとする)、うどんとペンネぐらいしか与えていないのだが、これが出た時の息子の食事はルイス・ハミルトンより速いんじゃないだろうか?なお、私はF1ドライバーではキミ・ライコネンが好きである。
好きすぎるあまり、寝かしつけの際に「お布団かぶろうね」と言ったのを聞き間違えて「どん、うどん!」と興奮しだして眠らなかったこともあるぐらいだし、一時期私との会話の9割が「パパ、うどん」から始まり、「私はうどんだったのか、そしてどこのうどんだ讃岐か山田かひもかわか」と夢で魘されるほどの愛を伝えられていた。
おやつは控えめ
なお、おやつのプライオリティは低めである。おやつを求められた際、「もうすぐごはんができるよ。」と伝えると、得心顔で喜び、おやつは不要になるのである。ちらっと「私たち夫婦の料理が…」と言った根拠はここにもある。
なお、彼のおやつは野菜せんべい(ハイハイン)と海苔が鉄板だ。ジュースは生まれてこの方与えていない。毎日ルイボスティーを美味しそうに満足気に飲むのだからそれでいいのだ。
江戸っ子のようにパリっと音を立てながら海苔を食べる姿はとても格好いい。パリッとしてないと不満顔をするため、冷蔵庫で丁寧に乾燥キープ保存をしている。彼のお気に入りのものはVIP待遇だ。
伊豆に旅行に行った際、ホテルにあった海苔は断固として食べなかった。パリッとしていなかったし、普段食べているものよりはかなり味と風味も劣っていた。おいおい、そのグルメっぷり本当に誰に似たんだ?
おわりに
この記事を書いてしまったあと、突然息子の嫌いな食べ物が増えていき、これを読んだ方に「トニーさんの息子さんって何でも食べるんですね!いいなー!」なんて言われてどぎまぎしないことを祈るばかりである。
息子よ、年齢が上がるにつれ食べられるものがどんどん増えていくはずだ。父はこれから君が好きになる料理を究めていく所存であるから、ひとつよろしく。