自動販売機の『当たりが出たらもう一本』に生涯唯一当たった時の話。

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5月ぐらいから子どもがスプーンを使って上手に掬えるようになってきました。最初は少しずつしか掬えなかったものや、私たちの補助がなければまったく掬うことができなかったものもどんどん克服していき、最近では手伝ってあげようとすると怒ってしまうようになりました。

 

お皿の淵に寄ってしまって取りにくいものができてしまった時は、諦めて私にスプーンを差し出して手伝わせようとすることもありますが、ほぼ自分一人で食べきるようになりました。素晴らしい成長です。

 

しかし、上手になって余裕が出てきたのか、大好きな妻の手作りプリン(牛乳・卵のみ)を大量に掬えた時、スプーンを空中で止め、恍惚の表情を浮かべて私たちに自慢してくるようになったのです。

 

「すごいねー!」と褒めてあげると、笑いながら全身で喜ぶため、手に持っていたスプーンを高く掲げてしまうことがあります。そうすると物理の法則上、スプーンに載せた大量のプリンは床へ転落し、食べられないものになってしまうわけです。ああ悲しい悲しい…。

 

「あれ、この息子の悲しさ、どこかで私も感じたことがあるぞ…!」と記憶を手繰り寄せたところ、高校生の頃に『当たり付き自動販売機』の前で体験した悲しさだということがわかりました。

 

 

当たり付き自動販売機

おそらく誰もが一度はチャレンジしたことがあるであろう、『当たり付き自動販売機』。有名なのはダイドードリンコ社のものだと思います。

 

自販機情報|ダイドードリンコ

 

自動販売機にお金を入れ、購入する商品のボタンを押すと、数字のルーレットが回り、それが揃う(当たる)ともう一本もらえるという仕組みだったと記憶しています。

 

私は高校生の時、生涯唯一この「当たり」に遭遇したことがあるのです。

 

部活を終えて下校する途中

その運命の日は冬の平日でした。いつも通り部活を終え、帰路についた私は、無性にコーンポタージュが飲みたくなり、自動販売機の前で立ち止まりました。

 

自動販売機にお金を入れ、コーンポタージュの商品選択ボタンを押し、商品受け取り口からコーンポタージュの缶を取り出すという一連の動作を終え、その場で「さて飲もうか」とプルタブに手を付けたその時、自動販売機から聞きなれない音楽が聞こえたのです。

 

商品選択ボタン再度点灯

驚いて自動販売機を見ると、見慣れないエフェクトが発生した後に(すこし記憶が朧気ですが)、すべての商品選択ボタンが点灯したのです。

 

今まで『当たり』に遭遇したことがなかった私は、「当たることがあるものなのか!!」と驚き、感動しました。これまで、ただの鬱陶しい購入エフェクトだとしか捉えていなかったのですから。

 

この感動を誰かに

「今、目の前で起こった出来事を誰かに伝えたい!」という強烈な衝動に駆られた私は、自動販売機のボタンを押すことなく、先ほどまで一緒に部活で汗を流していた同級生に電話をかけました。

 

私「今、自動販売機でコーンポタージュ買ったら、当たりが出て!!」

同級生「え、マジ!?あれって当たるの!?どんな感じ!?」

 

興奮していたので、会話の内容を詳らかに覚えてはいないのですが、このような若さ溢れるやり取りをしたような気がします。

 

そうして、ヒーローインタビューを受けているかのような気分で、電話をしていたのですが、目の前の自販機から活力が失われる気配があり、その一瞬の後、商品選択ボタンの点灯が一斉に消えてしまったのでした。

 

消灯ショック

「消えてしまった!!」私は天国から地獄へ落とされたかのような絶望的な気分でそのように叫び、電話口の相手を驚かせました。

 

私は会話を続ける気力もないほど憔悴しきってしまい、慇懃無礼に電話を切り、自動販売機を検めますが、再点灯の兆しは全く見られません。

 

私は、『あたり』を得る権利を失したのです。

 

損をしたわけではないが…

改めて考えてみれば、電力の無駄を抑えるため、当たりの制限時間を設けているのは当然だと思えます。その制限時間も短いわけではなく、電話で話す余裕があったぐらいですから、結構な時間待ってくれたのだと思うのです。

 

そもそも当たる可能性などこれっぽっちも期待しておらず、お金を払って商品を購入するという本来の目的は達成しているのですから、そこまでショックを受けるほどのものでは無いのです。

 

しかし、その夜は「あの時、さっさとボタンを押していれば…」という後悔が頭の中を占めてしまい、なかなか寝つけませんでした。

 

おわりに

若さゆえの顕示欲なのか、根っからの阿呆なのか…。何とも言えない青春の思い出です。この話をまさか子どもの食事シーンで思い出すことになろうとは。

 

今だったら、スマホのカメラでスマートに撮影してSNSにアップするのでしょうが、当時はカメラ付きの携帯電話が市場に出回ってきたばかりであり、私の携帯電話にはカメラ機能が付いておりませんでした。

 

皆様も当たりが出たら、感動の余韻に浸る前に、まずはボタンを押しましょう!